2011年08月14日 

[株価算定] WACCとは?(2)WACCの前提条件 ②適用したβ、③適用したD/Eレシオ

[株価算定] WACCとは?(2)WACCの前提条件 ②適用したβ、③適用したD/Eレシオ

今回、本コラムにおいては、前回説明したマーケット・リスクプレミアムに続き、②適用したβ、③適用したD/Eレシオついて簡易的に解説したい。

(適用するβ及びD/Eレシオ)
まず、解説に入る前に、β及びD/Eレシオの二つの数値は、対象会社のβ、D/Eレシオに加えて、類似会社のデータを含めた検討が必要になることを言及しておきたい。そもそも、WACCは、直近のキャッシュフローのみならず、将来のキャッシュフローの割引率としても活用されるため、WACCを決定するに際しては、10年後、30年後、50年後にその評価対象会社の最適な資本構成(D/Eレシオ)がどうなっているのかということを考える必要がある。

(D/Eレシオについて)
D/Eレシオについては、直近数年で、借入金の返済が進んでいて、D/Eレシオが毎年低下しており、今後もその傾向が変わらないことが予め読めている場合には、到達するD/Eレシオを低めに置かなければならない。一つの考え方としては、同業他社の平均の水準に概ね落ち着くので、同業他社のD/Eレシオの平均値を用いるという手法もある。但し、各社ごとに事業モデルも異なり、各社ごとに理想とするD/Eレシオは異なることから、マネジメント・インタビューの際に、経営層が目指しているD/Eレシオの水準をヒアリングし、その数値も踏まえて設定すべき性質の項目である。

(βについて)
さて、βとは何か、まず簡単にいうと、ある指標とするINDEXとの相関係数であり、意味するところとしては、証券市場との感応度を示す。要するに、TOPIXがプラスの方向あるいはマイナスの方向に(二つが同じ方向に)1動いた時に、個別銘柄が2動くとするとその個別銘柄のβは2.0であり、TOPIXが1動いた場合に個別銘柄が0.5動くとすると、その個別銘柄のβは0.5という結果となる。

(βのサンプリング期間及び頻度)
一般的には、①ある一定の期間(1年、2年、3年、5年)のデータで、②ある一定の頻度(日次ベース・週次ベース・月次ベース)でサンプリングした値を、日本国内の株式市場であればTOPIXと、海外の株式市場との比較であれば、MSCIワールドインデックスとの間で、相関分析を行い対象会社、競合他社個々の相関係数を算出する。

統計学的な観点からいうと、一般的にサンプリング期間を5年、サンプリングの頻度を月次ベースにするのが、学説的には正しいという意見もあるが、仮にその場合には、5年×12個の60個のサンプルをもとにすることからデータ分析上、サンプリング数的にも十分な値であるのではないかと思われる。しかしながら、IT系などの新興市場の銘柄の場合、対象会社も類似会社も、上場後の5年という十分なデータがとれないことから、週次ベースを用いらざるを得ないことも多い。

株価算定時のβの処理については、サンプリングした類似会社のレバードβを一旦リレバードし、リレバードβを求め、その平均値を求め、対象会社のD/Eレシオに掛け合わせて、適用するβを求めるというのが一般的ではあるが、詳細は複雑なので、別途細かく説明したい。


上記の通り、3回に渡りWACCの説明を行ってきたが、実際の実務においては、説明した内容よりももっと複雑な議論がなされた上で、株価算定の作業は行われており、今後ますます株価算定書の重大性が増す中で、算定人のみならず算定書を取得する側もこうした背景ロジックをしっかりと理解しておくことは極めて重要ではないかと思う。


[関連コラム]
WACCとは?(1)WACCの構造
WACCとは?(2)WACCの前提条件 ①マーケット・リスクプレミアム
「WACCとは?(2)WACCの前提条件 ②適用したβ、③適用したD/Eレシオ」


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